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【新・関西笑談】火を噴くアーティスト(5)現代美術作家 ヤノベケンジさん(産経新聞)

 ■芸術を否定されたまま逃げ出せない 「水都大阪」は橋下知事との戦いだった。

 --「水都大阪2009」について教えてください

 ヤノベ 僕にとって大阪で初といっていいくらいのアートを軸にしたイベントだった。しかし、橋下徹知事が就任し状況が一変した。当初は、海外からアーティストを呼んでさまざまなイベントを催すはずだったが、大幅な見直しが迫られた。橋下知事も「一般の人はアートはわからないもん。そういったものに金を出す必要はない」という。そして、多くの関係者はなすすべもなく逃げ出すことになったのです。

 --でも、どうして踏みとどまったのですか

 ヤノベ イベントの大幅な予算カットと内容の見直しは、ある意味で僕自身が否定されたことだと思いました。でも、アートに否定的な人たちを含めて、アートの価値や意味をしっかりとわからせることができなければ表現者として今後やっていけないとも同時に思いました。

 --怒りの矛先が自分にも向かったわけですか

 ヤノベ 僕自身ももともと、アートの閉塞(へいそく)性を打ち破ろうとしてやってきましたから。否定されると、自分の存在やアート自体の可能性もなくなっていく危機感があった。橋下知事に「芸術は面白くない。お金を使う必要はない。二の次でいい」と思われるのはまずいと。周囲が逃げ出すなかで、自分がやるしかないと思いました。

 --リスクが高い賭けでしたね

 ヤノベ 予算もないし、もうかるわけでもない。しかも失敗すればメディアなどにさらされる。橋下知事はメディアがバックに付いたコメンテーターで、白であっても黒といえば黒になり、黒であっても白といえば白になる。大きな力を持っている。戦いを挑むには状況が悪すぎるなと。でも、逃げ出せばきっと後悔すると思った。そうした状況のなかで橋下打倒を決意しました。

 --勝算はあったのですか

 ヤノベ やるなら勝たないといけない。同時に何とかなるとも思った。大阪生まれのべたべたのキャラクターであるトらやんがいれば、橋下知事や一般の人にアートを分からせるツールになるはずだと。

 --具体的なプロジェクトはどういったものですか

 ヤノベ 橋下知事を包囲するプロジェクトです。市役所の玄関ホールに7メートルを超す巨大ロボットの「ジャイアント・トらやん」を配置し、京阪中之島線の駅に、トらやんを置いたりした。水都・大阪ということで、中之島から道頓堀周辺の川を全長17メートルのアート船「ラッキードラゴン」を回遊させたりしました。

 --多くのボランティアも集まったと聞きましたが

 ヤノベ 多くの人が手弁当で制作を手伝ってくれました。町の人によってプロジェクトが支えられる構造となったことは一つの成果。力を結集してプロのアートを見せることができたと思う。

 --町が劇場、あるいは美術館のようでしたね

 ヤノベ 大阪の町のいたるところで、アートを満喫してもらえたと思う。アートは必要ないと思っている人たちにも、生きる力や勇気を与える存在であると理解してくれたと思っています。

 --そうした成果が、大阪文化賞の受賞につながったのでは

 ヤノベ 多くの人が支えたイベントであったのに、僕個人に賞が与えられて、正直驚いている。でもアーティスト生命をかけて挑んだ思いを橋下知事や多くの人が受け止めてくれたんではないかと思っています。でも、そこで終わりではない。文化は一過性ではないと橋下知事に訴え続け、これからも大阪の文化力を育てていく活動をしていかないといけないと痛感しました。=おわり(聞き手 今西和貴)

                   ◇

 次回は冒険家の永瀬忠志さんです。

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